top of page

更新日:10月15日


ニットのお話をしようかな、と。


前回はAW26のテーマである「WHERE HONESTY」について書きました。

滲む誠実さとはなんだろうか。


好きな子にちょっかいを出してしまうような、少し幼くて、素直とは言い難い行動。

けれど、その裏側には、むしろ隠しきれない気持ちが表れているのかもしれない。



そんなことを考えながら、今回のコレクションを制作しました。




今回紹介するのは、Fulling Knitシリーズです。





まずは柄のお話から。



今回のチェック柄には、社会的な権威に対する問いを込めています。




あまり大きな声で言うことでもないのですが、デザインの背景には、国際的な情勢へ感じていた不安がありました。

社会の中で強い影響力を持つ人や、正しさを象徴するような形式。


そうしたものは、いつも整然としていて、揺るぎないものとして見せられます。



でも、本当にそうなのだろうか。



権威があることと、正しいことは同じなのか。整っていることと、誠実であることは同じなのか。


そんな疑問から、規則的なチェック柄を少しずつ歪ませていきました。





チェック柄は、縦と横の線が一定のルールで交差することで成立しています。その規則性が崩れたとき、見慣れた柄は少し違った表情を見せ始めます。


今回のチェックは、権威の象徴が歪んでいく過程を表現したものです。








そして、もうひとつ。



このニットには、歪なボタンを取り入れています。

その着想のひとつになったのが、トランプ氏が暗殺未遂に遭った出来事でした。



引用:Republican presidential candidate former President Donald Trump is helped off the stage at a campaign event in Butler, Pa., on Saturday, July 13, 2024.

AP Photo/Gene J. Puskar



政治的な出来事をそのまま服に描くのではなく、そこから受けた印象を、ボタンという小さなパーツの形に置き換える。

整った形から少し外れた、不均衡なボタン。


チェック柄と同じように、ここにも、当たり前とされている形や秩序に対する違和感を込めています。


もちろん、服を着る人がこうした背景を知らなくてもいいと思っています。



ただ、何気なく見ていたディテールに、実は別の意味が潜んでいる。

そんな服のあり方もファッションのひとつですし、このARTICLESではデザイナーである僕が責任を持って語っていくことが面白いのではないかと思っています。


素材には、キッドモヘアをブレンドしたオリジナルの編み地を使用しています。

編み上げた後に縮絨加工を施すことで、繊維を絡ませ、柔らかさと奥行きのある表情を生み出しています。



素材そのものの風合いだけでなく、加工によって編み地の表情を変えることも、

今回のデザインを構成する大切な要素です。





そして、このニットポロはリバーシブル仕様になっています。








これも、単に一着で二通りの着方ができるようにしたかった、という話ではありません。



前回の記事で書いた「裏返った行動に潜む誠実さ」という考え方が、ここにもつながっています。



服には表と裏があります。



表に見せることを前提に整えられた面と、普段は人の目に触れない面。


僕たちは、いつの間にか表側を正面として捉え、裏側を隠すものとして扱っています。

でも、裏側にあるものは、本当に隠すべきものなのだろうか。

表からは見えない部分にこそ、その人らしさや、誠実さが滲むこともあるのではないかと思います。



だから今回は、表と裏のどちらも成立するニットを作りました。


ひっくり返すことで、柄の見え方や色の印象が変わる。


どちらかが正解で、どちらかが間違いというわけではない。







その日の気分や合わせる服によって、見せる面を選んでもらえたらと思います。

社会的な権威を象徴する柄を歪ませること。整った形から外れたボタンをつけること。

そして、表と裏のどちらも着られるようにすること。




一見すると、それぞれ違うデザインの話です。




けれど、僕の中では、どれも「当たり前とされているものを、そのまま受け入れていいのだろうか」という問いにつながっています。



何が正しくて、何が間違いなのか。何を表に見せて、何を裏に隠すのか。

その境界は、思っているほど明確ではないのかもしれません。



同じシリーズでは、ニットスカーフも制作しました。




ポロとは違い、巻き方によって柄の見える面積や表情が変わるアイテムです。



デザインに込めた意図を知ってから着るのもいいし、何も知らずに、ただ気に入ったから着るのもいい。



僕が服に込めた考えと、着る人がその服から感じることは、必ずしも同じでなくていいと思っています。



むしろ、その間に少しのズレや誤解が生まれることも、服の面白さなのかもしれません。

AW26 Fulling Knitシリーズ。



表と裏を入れ替えながら、自由に楽しんでいただけたらと思います。




ありがたい事にすでに完売している店舗もありますが、以下店舗にてお取り扱いがございます。



ISHIKAWA Transistor​

​KIYOSUMI SHIRAKAWA see you later

CHIBA iii3

NAGANO HOWDAY

OSAKA sign

EHIME soon








Thank you.





少し更新が空いてしまいました。

申し訳ございません...。


前回まででYUTASETOGAWAが始まるまでの話と、ブランドとして少しずつ形になっていった話、

そしてAW26からメンズブランドとしてリスタートするまでを書きました。


今回からは、9月からYUTASETOGAWA AW26のデリバリーが開始されたので、もう少し服そのものの話をしていこうと思います。




AW26のテーマは WHERE HONESTY 滲む誠実さとはなんだろうか。という問いをテーマに、好きな子にちょっかいを出してしまう幼い記憶など裏返った行動をすることが実は誠実で尊いんじゃないか。と感じたところがスターティングポイントです。




気取らないエレガンスや格好つけない格好よさなど、YUTASETOGAWAの哲学にも則っており、

AW26シーズンは全体のまとめ方の考え方としてEffortlessもキーワードに据えてあったりします。


「格好いい服を作ろう」と考えると、どうしても何かを足したくなる。


特徴的なディテールだったり、見たことのないシルエットだったり、新しい素材だったり。

もちろん、そういうものもファッションには必要だと思います。

僕自身、そういう服をたくさん作ってきました。


でもAW26を考えているときは、少し違う方向に興味がありました。


ちゃんとした服。


長く着られる服。


着ている人の邪魔をしない服。


そして、近くで見たときに初めて気がつくような、細かな違いがある服。


そんな服を作りたいと思いました。




だから今シーズンは、テーラリングについて改めて考えることから始まりました。




テーラードジャケットやコートは、服としてすごく完成されていると思います。

身体に合わせて立体的に仕立てる。

芯地を入れて、形をつくる。

裏地をつける。

着たときのシルエットを整える。

ひとつひとつに理由があります。

その一方で、完成されたものだからこそ、デザイナーが何かを加えすぎると、

途端に「デザインされた服」になってしまうようにも感じます。


AW26では、その境界について考えていました。



どこまで手を加えるのか。

どこから先は、手を加えないのか。

結果として、今シーズンはハンティングポケットを取り入れたジャケットスーツを発表しました。





Mod. HUNTING SUIT SETUP - GUABELLO®️ -



イタリア Guabello社のロイヤルフラノ生地を採用しておりウール特有のぬくもりのある表情。

ダブルの打合せだけど飾りボタンを無くした少しソリッドな印象。

中性的な大きめなラペル。

Vゾーンは少し深めに設計しそれに合わせて他のディテールも全体的に下めな配置。


一見すると、とてもオーソドックスな服ですが、実際に手に取ってもらうとより感じる

YUTASETOGAWAらしさみたいなものは滲んでいるんじゃないかと思います。





内側にハンティングポケットがあったり。

裏側の仕様に少し工夫があったり。

着たときのシルエットだったり。



実はハンティングポケットがついているジャケットはAW23で発表しており、

今作はそのアイデアをよりメンズウェアへと昇華したものです。





ジャケットの内側に大きなポケットがあれば、バッグを持たずに荷物を入れられる。

財布や携帯電話だけではなく、少し大きなものまで入れられる。

単純に便利だから作ったディテール。

でも、作ってみるとそれだけではありませんでした。


余談ですが、海外ではアジア人は特にスリの被害に遭いやすく、狙われたこともあります。

スリを防止できるといいな、と思ったのがはじまり.,,。笑





表から見えない。

でも、確実に存在している。

服を着ている本人には、その存在がわかる。

そういうところが妙に気に入ってしまいました。


服の内側には、外から見えないものがたくさんあります。

芯地だったり、縫い代だったり、裏地だったり。


完成した服だけを見ると隠れてしまうものですが、そこにも服を成立させるための理由があります。


僕はそういう部分が好きです。




「裏勝り」という言葉があります。



引用: 喜多川歌麿 青楼十二時 卯ノ刻



表よりも裏に凝る、というような意味で使われる言葉ですが、AW26を作っているときに、この言葉を何度か思い出しました。


別に派手なことをしたいわけではない。

誰かに見せるためだけでもない。

自分が着たときに、少し嬉しくなる。

服を脱いだときに、もう一度見たくなる。

そういう服がいいなと思いました。



だから今回のテーラリングは、外側から見たときの強さだけではなく、

内側まで含めて一着の服として成立させることを意識しています。

たぶん、これが今回の「honesty」のひとつなのだと思います。






ちゃんと作る。

必要なものは必要な場所に。

余計なものは、できるだけ足さない。

そして、その服を着る人が長く付き合えるようにする。

AW26では、そんな当たり前のことを、改めて考えていました。

テーラリングの話をすると、まだまだ書きたいことがあります。

毛芯のことや、マーベルトのこと。

キュプラの裏地や、生地のこと。

でも、その話を始めるとまた長くなりそうなので、今日はこの辺で。





Mod. HUNTING SUIT SETUP - GUABELLO®️ -

こちら決して安いとは言えませんが、以下の限られた店舗のみでの展開となっております。


CHIBA iii3

AICHI abundantism

OSAKA sign



ぜひお近くの店舗で素敵な接客を体験してみてはいかがでしょうか。









Thank you.







bottom of page